胸の痛みの原因は、どのようなものがありますか?

胸の痛み

「胸の痛み」の原因は以下の通りたくさんあります。その中でも特に「心臓や血管」の病気は命に関わりますので、確実に診断をすることが必要です。私たち循環器専門医は、以下のすべての疾患を頭にいれ診断しています。
その中で一番大事なことが、病歴聴取になります。

  • これまでの人生で初めての症状なのか、頻度、回数、症状の持続時間
  • どのような時に症状が出るのか(動いているとき・安静にしているとき・寝ているとき・食事のあと)、背中の痛みはあるか
  • 突然起きるのか? どうしたら良くなるのか
  • 同じ病気のご家族がいるのか

などを聞くことで、ある程度的をしぼることができます。
そしてその方の年齢、性別、職業歴、喫煙歴などと合わせて、更に絞り込んでいきます。

循環器 呼吸器 消化器 その他
狭心症 肺炎 逆流性食道炎 帯状疱疹
心筋梗塞 気胸 急性胃炎 筋肉痛
急性動脈解離 肺塞栓症 胃潰瘍 肋骨骨折
大動脈瘤破裂 胸膜炎 十二指腸潰瘍 乳腺炎
急性心不全 咳嗽(せき) 胆石 心臓神経症
心筋炎   胆嚢炎 過換気症候群
心外膜炎     肋間神経痛
不整脈      

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胸の痛みがある場合に、どのような検査を行いますか?

胸の痛みの原因は、どのようなものがありますか?」の項目で述べた通りですが、病歴聴取で、ある程度診断を絞れます。そして採血、心電図、心臓エコー検査、胸部レントゲン検査などを組み合わせることで診断することになります。「胸の痛み」の場合でも、逆流性食道炎などの消化器の病気のこともあり、その際は胃カメラなどを追加で実施することもあります。

どのような痛みの場合に、クリニックを受診したらよいですか?

胸全体が締めつけられたり、押さえつけられたような痛みがある場合は、狭心症、心筋梗塞の可能性が高く受診して下さい。また冷や汗を伴うこともあり、左肩、左腕、左手、顎、歯などに痛みが放散することがあります。この場合も受診をお勧めします。ただ糖尿病の方は神経障害にて症状がさほど強く出ない場合でも心筋梗塞になっていることもあり、症状だけでは判断できないのが実情です。命に関わる心臓病を確実に見落とさないためには、「胸の痛み」の場合は診察を受けることをお勧めします。

背中の痛みは、心臓と関係がありますか?

背部に突然これまでに経験したことのないような痛みや、焼け付くような圧迫感があり、体のだるさや呼吸困難が現れる場合、急性心筋梗塞、急性大動脈解離、大動脈瘤破裂のような、重篤な病気である可能性が考えられます。
「突然の経験したことのない背中の痛み」「冷や汗を伴う背中の痛み」というフレーズは、大きなことが身体の中で起きている可能性が高く、私たち臨床医にとってはとても気になるフレーズです。

胸の痛み

「後ろからバットで殴られたような衝撃」と話される方もいらっしゃいます

胸の痛み

奥歯の痛みは、心臓と関係がありますか?

奥歯に行く神経と心臓の神経は分布が同じため、心臓の病気で奥歯が痛むことがあります(放散痛と言います)。頻度は多くはありませんが、「奥歯が痛い」のに、歯医者さんでは問題ないと言われた・・・という場合、心臓病(特に狭心症)である可能性が高く、慎重に対応する必要があります。一見関連がないと思われる症状でも、我々循環器専門医からしたら大事な症状であることもあり、困っている症状については全てをお話頂きたいと思います。

胸の痛み

狭心症や心筋梗塞が原因の場合は、どのような治療を行いますか?

「急性心筋梗塞」は非常に危険な病気ですので、一秒でも早く、詰まった心臓の血管の血液の流れを取り戻さなければなりません。亡くなる方の半数以上は発症後1時間以内に心室細動という不整脈で命を落とします。そのため、発症後は可能な限り早く、緊急心臓カテーテル治療を行い血液の流れを取り戻します。その後集中治療室で管理を行い、救命に努めます。ダメージを受けた心臓がいきなり元通りの生活に戻るには負担が大きいので、薬物治療や心臓リハビリテーションを実施して徐々に心臓の状態を元に近づける治療をしていきます。
「狭心症」は、心臓の血管がせまくなっている状態です。そのため完全に詰まってしまわないように、お薬を使いますが、効果が弱い場合は心臓カテーテル治療を行い、狭い部分を広げて治療を行います。治療後は薬物治療や心臓リハビリテーションを実施し、再発予防を行います。
特に忘れてならないことは、「急性心筋梗塞」も「狭心症」も、何もない状態から突然発症するのではなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙など長年の生活習慣の乱れからくる病気であるということです。つまり、いくら薬物治療や心臓カテーテル治療を施し心臓の血管を綺麗にしても、その治療はあくまで姑息的治療である、ということです。原因である生活習慣を改善しなければ、「また病気になる=再発する」という、いたちごっこをすることになるのです。

薬物治療

胸の痛み
  • ①血管を広げて血流を増やす薬
  • ②心臓の酸素需要を減らし、心臓の負担を軽減する薬
  • ③血液の流れを良くする薬

心臓リハビリテーション

胸の痛み
  • 不整脈が減る(自律神経を安定する)
  • 心臓の無理な働きを抑えられる
  • 血管の状態がよくなる(血液を送りやすくする)
  • 息切れが良くなったり筋力が上がるとで、日常生活を楽に過ごせる

手術(心臓カテーテル治療、バイパス手術)

心臓カテーテル治療とは?

心臓カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞により、心臓に血液を供給している冠動脈の中で、細くなっている(また詰まっている)場所をカテーテルによって治療し、血流を取り戻す手術です。

胸の痛み
カテーテルの挿入
胸の痛み 手首もしくは足の付け根から、カテーテルという細い管を血管に挿入し、心臓の血管(冠動脈)まで進めます。
血管が細くなっている場所を確認
胸の痛み 血管に造影剤を流し、X線撮影をして、血管が細くなっている個所を確認します。
狭くなっている個所を広げる
胸の痛み 細くなっている場所が確認できたら、カテーテルの先端につけた風船を膨らませて血管を押し拡げます。その後、拡げた血管が縮んでこないように、ステントという金属の網を血管に留置します。
カテーテルを抜く
カテーテルを抜いて、挿入部の止血を行って治療は終了です。
治療時間は、1~2時間です。身体に大きな傷はできず、カテーテルの入る2mm程度の傷ができる程度ですみます。

治療後は、血液をサラサラにするお薬を飲み続けていただく必要があり、出血等に注意する必要はありますが、基本的に健康時と同じ生活を送ることが可能となります。
また、再発予防のため、禁煙、食生活や運動習慣など日常生活の見直しを図ることが重要です。狭心症、心筋梗塞は原因であり生活習慣(糖尿病、脂質異常症、高血圧など)の是正をすることが再発予防には必須です。ですので、心臓カテーテル治療をしたから全ておしまい、ということはなく、再発予防のために「原因疾患の治療の始まり」とお考え下さい。

冠動脈バイパス術とは?

胸の痛み

狭心症や心筋梗塞により、心臓に血液を供給している冠動脈の中で、細くなってしまった(また詰まってしまった)場所を飛び越えて、血液が流れるバイパス(迂回路)を作る手術です。
2012年に上皇陛下がお受けになられた手術です。

バイパスに用いる血管を採取します
全身麻酔の後、バイパスに用いる血管を胸や胃、足などから採取します。
バイパス手術を行います
胸の中央の骨を切開し、心臓を露出させます。
手術は、1.心臓を止めて人工心肺を用いる方法と、2.心臓を動かしたまま行う方法の2パターンがあり、個々の病態や手術リスクに応じて使い分けられます。心臓を動かしたまま行う手術は難易度が高いのですが、手術する先生方の技術向上で最近はもっぱら、心臓を動かしたまま行うのが通常です。
胸を閉じて手術が終了します
手術時間はつなぐ血管の数にもよりますが、約3~5時間程度です。
出来るだけ早い時期からリハビリが始まります
手術当日には麻酔から覚めて、翌日からリハビリが始まります。
入院期間は2週間程度が目安となります。
退院後は転倒などに注意します
バイパス術後は胸の骨が骨折している状態で、胸の骨が癒合するまでには1~3カ月を要します。上半身を大きく捻じる動作(ゴルフなど)や、上半身に大きな力の加わる動作、転倒などに注意をして過ごす必要があります。

カテーテル治療と同様に、血管が細くなった原因を取り除いたわけではありませんので、再発予防のため、禁煙、食生活や運動習慣など日常生活の見直しを図ることが重要です。狭心症、心筋梗塞は原因であり生活習慣(糖尿病、脂質異常症、高血圧など)の是正をすることが再発予防には必須です。ですので、心臓バイパス手術をしたから全ておしまい、ということはなく、再発予防のために「原因疾患の治療の始まり」とお考え下さい。