腎臓病で背中が痛くなる原因
腎臓は後腹膜というお腹の背中側、背骨の両脇、横隔膜の下あたりにあります。イメージとしては、腰が痛いときなどにトントンと叩く場所あたりに腎臓はあります。背中側にある臓器ですので、腎臓に異常が生じた場合の特徴として、背中や腰周辺の痛みとして表れることがあります。背中や腰周辺の痛みは、疲労などからくる整形外科的な痛みとしてのイメージが強い場所でもあります。ですので、腎臓病に特徴的な症状を把握している必要があります。
腎臓は腎被膜という膜に囲まれています。腎臓に何らかの異常があり、腎臓自体が腫れてくると、腎被膜が引っ張られ痛みが生じます。急激に引き延ばされることで、より激しい痛みを伴います。その典型的なものが、尿路結石による痛みです。尿路結石は、非常に再発リスクの高い病気で、約80~90%の方が再発するといわれています。原因は不明なことが多いですが、生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、痛風など)がある方に好発します。また、尿路結石の40%は肥満の方ともいわれています。女性に比べ男性で発症しやすく、男性の7人に1人が尿路結石を一度は発症したことがあるとされています。尿路結石では、腎臓から膀胱に尿を運ぶ尿管の中に石がつまり、上流の腎臓側の尿管や腎盂といわれる部分に尿が過剰にたまり、腎盂の内圧が上昇します。この状態を水腎症といい、急激に水腎症が起こると激痛を伴います。また、水腎症は進行すると腎不全となることもあります。水腎症の原因としてその他にも、尿路狭窄や尿管腫瘍による尿管障害、膀胱の機能低下によるものなどがあります。
腎臓が原因の痛みの中でも、特徴的な症状を伴う急性腎盂腎炎という病気があります。腎盂腎炎は、尿道の出口から侵入した細菌が尿路をさかのぼり腎盂に達することで起こります。細菌が腎盂に達する原因として、結石、前立腺肥大による尿路通路障害によるもの、尿路カテーテル留置、糖尿病、ステロイド治療などによる免疫力の低下などがあげられます。症状としては、背中の腎臓あたりの痛みに加え、排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状や、発熱、全身倦怠感などの全身症状、悪心、嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。特に腎盂腎炎に特徴的な症状は、腰背部痛を伴う発熱です。腎盂腎炎では、細菌が腎臓から血流にのって全身に広がった場合、敗血症となり、血圧低下、急性腎不全、最悪の場合、多臓器不全となり命にかかわることもあります。治療に反応しない場合や繰り返し腎盂腎炎を発症すると、症状が長引き慢性腎盂腎炎となります。慢性腎盂腎炎は目立った症状はありませんが、進行すると慢性腎不全に移行することもあるため注意が必要です。
整形外科に通っても良くならない痛み、一度検査しませんか
背中の腎臓あたりの痛みは、腎臓と関係のない可能性もあります。疲労やストレスからくる神経痛や筋肉痛、椎間板ヘルニアなどの整形外科的疾患でも、同様の痛みを感じることがあります。特に高齢者やデスクワークが多い方では、長時間の座位が続くことなどにより、慢性的な腰痛を持っている方も多いです。背中、腰痛の原因は様々であり、痛みや症状だけで原因を鑑別することは難しいです。そのため鑑別には検査を行う必要があります。痛みの原因が腎臓である場合、その多くは、腹部超音波検査、CT検査などで診断することが可能です。整形外科での検査で、筋肉や骨に異常がないと診断された方や、マッサージやリハビリで症状が改善しない方は、腎臓に異常がないか検査を行うことをお勧めします。特に背中、腰の痛みに加え発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐などを伴う腎臓病による特徴的な症状がある場合は、腎臓が原因である可能性が高く、すぐに受診してください。