透析治療とは
腎臓が悪くなり腎不全の状態になると透析治療もしくは腎移植が必要になります。これらはまとめて腎代替療法と呼ばれ、文字通り腎臓の代行をする治療です。つまり透析治療とは腎移植が他人の腎臓の力を借りるのと同じように、機械や薬の力を借りて腎臓の働きを補う治療です。そのため、透析治療によって腎臓の働きを回復させることはできません。よく透析を始めたら一生続けないといけないと言われますが、それは自分の腎臓の力だけでは生きていけないくらい腎臓が悪くなったために、透析治療が必要になるということです。
透析治療にはさらに血液透析と腹膜透析の2種類があります。血液透析とは機械を使って血液から老廃物を取り除く方法で、腹膜透析とは自分自身のお腹にある腹膜という構造を使って老廃物を除去する方法です。一般的に透析というと血液透析のことを言うことが多いです。どちらの透析をするにしても前もって準備が必要で、血液透析の場合には内シャントとよばれる血管の手術が必要です。
なぜ透析が必要になるのか?
透析とは腎臓の代わりをしてくれる治療です。つまり、透析とは腎臓のかわりに毒素を取り除いたり、余分な水分を除去したりする治療であり、腎臓の機能を回復させる治療ではありません。腎不全が進行し末期の状態になると、尿から排泄できない余分な老廃物が体内にたまってきます。老廃物がたまってくると最終的には尿毒症という状態になります。尿毒症になると食欲低下や吐き気、疲れやすい、全身のかゆみといった症状のほか、意識がなくなったり、心不全などを引き起こし最終的に死に至ります。死んでしまってからでは透析治療はできませんので、尿毒症の兆候が現れた段階で透析治療を計画的に開始しなければなりません。
透析治療による日常生活への影響
血液透析は週3回、1回4時間の治療が一般的です。週3回も治療が必要なのかと思われるかもしれませんが、本来腎臓は24時間365日休まず働いている臓器ですので、その代わりをするにはそれでも足りないくらいです。ですので、透析治療を開始してからも食事療法や飲み薬の調整が必要になります。ただし透析している以外の時間はそれまでの日常生活を続けることができますし、夜間透析を行っている施設もありますので仕事を続けることももちろん可能です。また、日本全国に透析施設はありますので旅行も可能です。
腹膜透析の場合は自分の腹膜を使って透析を行いますので、自宅での治療が可能ですが、毎日透析を行う必要があります。また、自宅以外でも勤務先や旅行先に機材を持っていって腹膜透析を行うこともできます。透析にかかる医療費は年間で1人あたり約500万円ですが、助成制度により自己負担額は月1~2万円(所得による)が上限になります。
透析治療開始を遅らせるために
透析治療について説明させていただきましたが、できることなら透析はしたくないと誰しもが思います。そのためにまずはできる限り早期の慢性腎臓病の段階で病気を発見し、食事療法を含めた治療の開始が重要です。また、残念ながら腎不全が進行してしまい、近い将来に透析治療が避けられない場合にも、少しでも進行を遅らせるためにできることを主治医と相談し治療に前向きにとりくんでいくことが大切です。また適切な時期に透析治療を開始することは腎臓以外の血管系合併症(心筋梗塞、脳梗塞など)を防ぐためにも重要であるため、いたずらに先延ばしにすることもよくありません。