腎臓病と生活習慣病の関係
腎臓病と生活習慣病は深く関わっています。糖尿病や高血圧、高コレステロール血症、肥満、喫煙などの多くの生活習慣に関わる原因が慢性腎臓病の発症に関連しているとされます。生活習慣病は動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こしますが、慢性腎臓病の状態は生活習慣病とともにさらにその危険性を悪化させます。
腎臓病と高血圧
高血圧は腎臓病と最も関りが深い病気です。高血圧の原因で最も多い本態性高血圧の原因はわかっていませんが、腎臓による体の水分量やホルモン調節、自律神経の調節などが密接に関わっていると考えられます。また、高血圧の原因のひとつに塩分の過剰摂取があります。食事からとった塩分は腎臓の調節で尿に排泄されますが、腎臓が悪くなると過剰な塩分が体にたまります。体にたまった塩分は水分をひきつけてむくみを生じ、血管内の水分が増えて血圧が高くなります。高血圧の状態が続くと腎硬化症を発症し腎臓が悪くなり、腎臓が悪くなると高血圧が悪化しやすくなり、さらに腎臓を悪くするという悪循環になります。この悪循環を断ち切るためには血圧を下げる薬物治療だけでなく、食事療法による減塩、減量がとても重要です。
腎臓病と糖尿病
糖尿病の3大合併症である糖尿病性腎症は現在我が国の透析になる原因の1位です。高血糖の状態が持続すると、腎臓の糸球体が障害され蛋白尿が生じ、徐々に腎機能が悪化します。糖尿病だけでも心筋梗塞や脳卒中といった合併症のリスクを高めますが、腎臓が悪くなって慢性腎臓病となり、さらに高血圧などを合併することで合併症の危険はさらに上昇します。また、腎機能が悪くなると糖尿病治療薬の中には副作用が起こりやすくなるものがあり、治療薬の選択肢が狭まります。さらに腎障害が進行し腎不全の状態に近づくと、いくつかの要因でHbA1cやグリコアルブミンといった糖尿病の指標が低下してきます。これは必ずしも糖尿病がよくなったことを意味しない場合があり、血糖の変動が大きくなり血糖コントロールが難しくなります。このため腎臓が悪くなる前から糖尿病の治療をしっかり継続して行うことが重要です。
腎臓病と脂質異常症
脂質異常症とは血液中のコレステロールや中性脂肪が高い状態のことで、動脈硬化の原因となります。動脈硬化が進行すると腎臓を障害し、慢性腎臓病を引き起こします。慢性腎臓病は心筋梗塞などの血管系合併症の高リスク状態であるため、慢性腎臓病があるだけで、LDLコレステロールの治療目標値は120mg/dl未満と厳しくなります。また、ネフローゼ症候群のような大量の蛋白尿がでる腎臓病では脂質異常症を引き起こし、コレステロールを上昇させます。