甲状腺とは
「のどぼとけ」のすぐ下にある、重さ10~20g程度の小さな臓器で、全身の新陳代謝や成長の促進にかかわる甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺は、蝶が羽根を広げたような形をしていて、右葉と左葉からなり、気管を取り囲むように位置しています。
甲状腺の病気は女性に多く見られます。甲状腺の異常は成人女性の30人に1人とかなり多い病気で、症状も自律神経失調症、不定愁訴、更年期障害と似ているところが多く、はっきりと区別することは難しいので、思い当たる人は甲状腺のTSH(甲状腺刺激ホルモン)の検査をして早目に対処することが重要です。

甲状腺の病気の症状
甲状腺の病気の症状は疲れやすい、むくみやすい、便秘がち、冷えなどの症状や、動悸がする、イライラして落ち着かない、暑がりで汗をかきやすいなど、多くの女性が常日頃から気にされる症状が多く、ご自身の判断で「産後の疲れかな」とか、「更年期だから仕方がない」といった方の中には甲状腺の病気が原因だったという場合があり、症状からはわかりにくい病気でもあります。
主な甲状腺の病気
- 甲状腺ホルモンの量が変化する病気
- 甲状腺内に腫瘤(しゅりゅう)ができる病気
- 両者の合併する病気
当クリニックでは、甲状腺腫瘍に対して頚部エコーを行い、腫瘍の大きさや血流の状態など頚部周辺の状態を詳しく観察いたします。
甲状腺ホルモンの量が変化する病気
甲状腺機能亢進症:バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など
甲状腺機能低下症:橋本病(慢性甲状腺炎)、粘液水腫、手術後甲状腺機能低下症、アイソトープ治療後など
甲状腺内に腫瘤が出来る病気
甲状腺良性腫瘍:腺腫様甲状腺腫、のう胞、腺腫など
甲状腺悪性腫瘍:甲状腺がん(乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん)、悪性リンパ腫など
甲状腺に出来た腫瘍がホルモンを作り出し、甲状腺機能亢進を示す病気
プランマー病(甲状腺機能性結節)
上記のような甲状腺の病気は、いずれもきちんと治療すれば治るケースがほとんどです。たとえ悪性腫瘍であっても、ほかのがん、例えば胃がんや肺がんなどと比べてもおとなしいタイプが多いです。
ホルモンの分泌異常で前述のような症状が出ても、内服薬、アイソトープ(放射線ヨウ素)治療、手術などでしっかり治療することによって、多くは不都合なく生活を送れるようになります。
甲状腺ホルモンと心臓の関係
心臓は甲状腺ホルモンに対し感受性が高いため、他の臓器と比べ影響を受けやすく、甲状腺機能亢進症及び機能低下症では様々な循環器系の異常を起こします。
甲状腺機能亢進症(そのほとんどがバセドウ病です)
- ホルモンが直接心筋の収縮能を増強させるため、最高血圧が上昇します。
- 間接的に抹消血管の緊張度を下げるため、最低血圧が減少します。このことにより、上・下の血圧の差より生じる脈圧が大きくなり、鼓動を強く感じられます。
- 心筋への刺激で頻脈も起こり、心臓内の神経系である刺激伝道系に作用すると心房の筋肉が影響を受け、心房性の不整脈が多くみられます。中でも心房細動が高頻度に認められます。心房細動は脳梗塞の原因となるために、必ず治療が必要です。
- 甲状腺ホルモンは冠動脈の攣縮を誘発する作用があり、それによる狭心症発作を起こすこともあります。
甲状腺機能低下症(ほとんどが橋本病です)
- 亢進時と逆のことが起こり、脈が遅くなったり心筋の収縮能が低下したりします。
- 末梢血管の緊張度増加により、上の血圧が下がり下の血圧が上がったりします。
- 心臓の周囲に水が貯まることもあります。機能低下の方の90%以上に二次性の脂質異常症を認めるため、動脈硬化からの狭心症、心筋梗塞などの発症に注意が必要です。そのため脂質異常症と言われたら、必ず甲状腺の機能評価は必要となります。
動悸・頻脈や徐脈・心房細動といった不整脈のある場合などには、直接心臓に器質的疾患がないかをみるだけでなく、血液検査で甲状腺ホルモンの量を調べています。甲状腺ホルモンが原因で、不整脈や心不全となるケースが多く、不整脈・心不全の際には必ず評価が必要です。またバセドウ病も橋本病も、基本的には飲み薬で治療が可能です。

- 首に腫れがある
- 安静にしているのに、動悸がする
- 手指が細かく震える
- 暑がりになり、水分を多く摂る、汗の量が多い
- よく食べているのに痩せてきた
- イライラしやすくなった、落ち着きがなくなった
- 体が冷え、寒がりになった
- 肌が乾燥し、カサカサする
- 身体が重く、だるさを感じる
- 食欲が無いのに太ってきた
- 朝起きたときに、顔や手がむくんでいる
- 便秘をしやすくなった
- 昼間も眠く、居眠りをするようになった
- 脈がゆっくり静かになった
- 月経不順になった